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フラットデッキの許容スパン

タスクふぉ編集部 2026/9/25

フラットデッキを使うと、根太も大引もパイプサポートも要らなくなります。スラブ下がすっきりし、工程も短くなる。だからこそ「スパンが持つかどうか」の一点に判断が集中します。

フラットデッキを使うと、根太も大引もパイプサポートも要らなくなります。スラブ下がすっきりし、工程も短くなる。だからこそ「スパンが持つかどうか」の一点に判断が集中します。

多くの現場では早見表を見て決めています。それ自体は正しい方法です。ただし、表から読んだ数値が安全側になるかどうかは、スパンの取り方と荷重条件を正しく設定できているかで決まります。ここを外すと、表を見ているのに危険側の判断をすることになります。

この記事では、許容スパンが何で決まっているのかを分解し、実務で間違えやすい点を整理します。


1. 許容スパンは2つの条件の小さいほうで決まる

フラットデッキの検討は、単純支持とみなして行います。両端が梁に載っているだけの梁として扱う、ということです。

確認する項目は2つあります。

曲げ応力度

Mmax = W · L² / 8
σ = M / Z ≦ fb / α

たわみ

δ = C · 5/384 · W·L⁴ / (E·I) ≦ L/180 + 5.0 mm

要確認:許容応力度 fb、たわみ算定用係数 C、鋼材のヤング係数 E の値を指針に基づいて記載

たわみの許容値が「スパン/180 に 5mm を足した値」という形になっているのが特徴です。スパンが長くなるほど許容たわみも増えますが、比例ではありません。

許容スパンは、この2つを両方満たす範囲の上限です。早見表の数値も、曲げで決まる値とたわみで決まる値を比べて、小さいほうを採用しています。板厚が薄いデッキではたわみで決まることが多くなります。

2. 設計荷重は3つの合計

図1 設計荷重は3つの荷重の合計。デッキ自重 w₂ は見落とされやすい
図1 設計荷重は3つの荷重の合計。デッキ自重 w₂ は見落とされやすい
W = w₁ + w₂ + w₃
記号 内容 決まり方
w₁ スラブ重量 スラブ厚 × 鉄筋コンクリートの単位容積重量
w₂ デッキ自重 板厚による
w₃ 作業荷重 打設方法による

w₃:打設方法で変わる

作業荷重は打設方法によって値が変わります。ポンプ工法とホッパー・バケット工法では、想定する値が違います。バケット打ちのほうが大きな値を要求されます。

要確認:各工法の作業荷重の値を『床型枠用鋼製デッキプレート設計施工指針』に基づいて記載

ここが実務上の分岐点です。「ポンプ打ちの前提で計算したが、現場ではバケット打ちになった」という変更が起きた場合、その計算は前提を失っています。打設方法は施工計画の早い段階で確定させてください。

w₂:忘れられやすい項目

デッキ自重は、スラブ重量に比べれば小さい値です。だからこそ計算から抜け落ちます。

指針では、板厚が確定していない段階では大きめの値を見込む扱いになっています。設計段階で板厚が決まっていなければ、安全側の値を使ってください。後で薄い板厚に決まったなら、余裕が増えるだけなので問題ありません。逆をやると足りなくなります。

要確認:板厚未定時に見込む自重の値

3. 施工割増係数 α をどう選ぶか

許容応力度を α で除する形になっています。つまり α が大きいほど、使える応力度が下がり、許容スパンが短くなるという関係です。

区分 係数 適用される条件
I類 1.0 荷重条件・施工条件が適切に設定・管理され、施工上の安全が確実に確保される場合
II類 1.25 I類以外のRC造・SRC造で、比較的厚い板厚を使用する場合
III類 1.5 I類以外のRC造・SRC造で、薄い板厚を使用する場合

要確認:各区分の板厚条件を指針の表に合わせて正確に記載

I類を選ぶ条件は「適切に管理される場合」です。これは管理体制への要求であって、自動的に適用されるものではありません。施工計画で荷重条件を明示し、現場でそのとおりに運用される見通しがあって初めて I類です。

早見表を見るとき、どの列を見ているかを意識してください。同じ板厚・同じスラブ厚でも、I類とIII類では許容スパンが数百mm変わります。

4. スパンの取り方を間違えない

図2 スパンの取り方。型枠の内法ではなく、梁躯体またはフランジの内法をとる
図2 スパンの取り方。型枠の内法ではなく、梁躯体またはフランジの内法をとる

ここが最も多い誤りです。「スパン」は型枠の内法ではありません。

構造 スパンの取り方
S造 鉄骨梁のフランジどうしの内法寸法
RC造・SRC造 梁躯体どうしの内法寸法
中間支保工がある場合 支保工で区切られた各区間

RC造で梁側型枠の内法を採ると、せき板の厚みぶんスパンを短く見積もることになります。数字としては小さな差ですが、早見表の適否がぎりぎりの場合には結論が変わります。

中間支保工を設ければスパンを分割でき、大スパンにも対応できます。ただしリブの許容支圧荷重の検討が別途必要になります。デッキは面で支えているわけではなく、リブで受けているためです。

5. 早見表を使うときに知っておくべき前提

早見表は便利ですが、次の前提の上に成り立っています。

  • 短期許容応力度で設計されている — 長期の余裕はありません
  • 等分布荷重を想定している — 一箇所に資材を積むような偏った荷重は想定外です
  • 衝撃に対する余裕が少ない — 打設時の衝撃、ポンプ筒先の振れ、人の跳ね上がりなどは織り込まれていません

つまり、表の値ぎりぎりで計画すると、現場での想定外に対する余白がほとんどない状態になります。表を満たしているから安全、ではありません。

特に注意すべき状況を挙げます。

  • スラブ上に鉄筋や資材をまとめて仮置きする計画がある
  • 開口部の周囲でデッキが変則的な載り方をする
  • 打設順序の都合で一箇所に集中的にコンクリートが載る時間帯がある

こうした条件があるなら、早見表の値から一段余裕を取るか、中間支保工を入れる判断が必要です。

6. 端部の納まりが計算の前提を支えている

図3 端部の納まり。かかり代・釘留め・梁側型枠の補強が計算の前提を支える
図3 端部の納まり。かかり代・釘留め・梁側型枠の補強が計算の前提を支える

計算は「両端が支持されている」ことを前提にしています。この前提を現場で成立させるのが端部の納まりです。

かかり代

デッキ端部を梁断面にのみ込ませます。のみ込み量が不足すると、コンクリートの重みで端部が落ちます。

釘留め

かかり代の部分を梁側型枠に釘留めします。これは横倒れ防止のためです。デッキは細長い薄板なので、打設中の振動で倒れます。倒れれば支持を失います。

梁側型枠の補強

デッキからの鉛直荷重は、梁側型枠に直接かかります。通常の梁型枠より大きな力が作用するため、縦受け桟木や転倒防止金物による補強が必要です。梁側型枠の高さが大きい場合には、支持金物の取付け部に補強を要する規定もあります。

要確認:かかり代の寸法、釘留め間隔、梁側型枠高さの基準値

これらは計算書には現れにくい項目ですが、成立しなければ計算そのものが無効になります。図面上で寸法を明示し、施工計画書にも記載してください。

7. まとめ

  • 許容スパンは曲げとたわみの両方を満たす上限で、薄い板厚ではたわみで決まりやすい
  • 設計荷重はスラブ重量・デッキ自重・作業荷重の3つ。デッキ自重を忘れない
  • 作業荷重は打設方法で変わる。ポンプかバケットかを先に確定させる
  • 施工割増係数 I類は自動的に適用されるものではなく、管理体制への要求
  • スパンは型枠の内法ではなく、S造はフランジ内法、RC・SRC造は梁躯体内法
  • 早見表は短期許容応力度・等分布荷重が前提。偏った積載や衝撃への余白は小さい
  • かかり代・釘留め・梁側型枠の補強が、計算の前提条件を支えている

次回は、軽量支保梁を用いる場合の検討を扱います。「中間部にサポートを設けてはいけない」という原則が、なぜ原則なのかを解説します。


要確認:ツールへの導線とURL

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