壁つなぎアンカーの引き抜き耐力|3つの破壊モードと躯体側の確認
壁つなぎ金物が6kNの許容耐力を持っていても、それを留めるアンカーが3kNで抜ければ足場は3kNしか持ちません。あと施工アンカーの3つの破壊モードと、躯体側の確認ポイントを整理します。
壁つなぎアンカーの引き抜き耐力|3つの破壊モードと躯体側の確認
壁つなぎの検討というと金物の許容耐力に目が行きますが、実際に先に壊れるのは躯体側であることが少なくありません。金物が6kNもつと言っても、それを留めているアンカーが3kNで抜ければ、その足場は3kNまでしかもちません。
この記事では、あと施工アンカーの引き抜き耐力をどう評価するか、そして改修工事で特に注意すべき点を整理します。
1. 耐力は「一番弱いところ」で決まる
壁つなぎが建物に力を伝える経路は、次のように連なっています。
足場 → 壁つなぎ金物 → アンカーボルト → コンクリート躯体
<!--FIG:fig-4-1:図1 力の伝達経路。耐力は最も弱い箇所で決まる-->
図1 力の伝達経路。耐力は最も弱い箇所で決まる
このどこか一箇所でも弱ければ、そこが全体の耐力になります。計算書で金物の許容耐力だけを示して終わりにすると、この連鎖の後半が抜け落ちます。
2. あと施工アンカーの3つの破壊モード
引き抜き力に対する破壊の仕方は、大きく三通りあります。それぞれで耐力を計算し、最小値を採用します。
<!--FIG:fig-4-2:図2 あと施工アンカーの3つの破壊モード-->
図2 あと施工アンカーの3つの破壊モード
モード1:コーン状破壊
コンクリートがアンカーを中心とした円錐形に引きちぎられる壊れ方です。もっとも一般的に支配的になります。
耐力に効くのは、有効埋込み深さとコンクリート強度です。深く埋めるほど円錐が大きくなり、耐力が上がります。
注意すべきはへりあきとアンカー間隔です。躯体の端に近い位置や、アンカー同士が近接している場合、想定した円錐が確保できず、耐力が大幅に落ちます。図面上は成立していても、現場で開口や柱型を避けた結果、端に寄ってしまうことがあります。
モード2:付着破壊
アンカーとコンクリートの境界で滑り抜ける壊れ方です。接着系アンカー(ケミカルアンカー)で問題になります。
穿孔後の孔内清掃が耐力を左右します。切粉が残ったまま注入すると、公称の耐力が出ません。これは計算では担保できず、施工管理の領域です。
モード3:ボルトの降伏・破断
アンカーボルト自体が伸びて切れる壊れ方です。鋼材の断面積と材質で決まります。
十分な埋込み深さが確保できている場合、この モードが支配的になります。逆に言えば、モード1やモード2で決まっている状態は、躯体側に余裕がないということです。
〔要確認:各モードの算定式と低減係数を、採用する指針・メーカー技術資料に基づいて記載〕
3. コンクリート強度をどう扱うか
新築の場合
設計基準強度 Fc を用います。ただし、足場を組む時期に注意してください。打設直後の躯体は設計強度に達していません。躯体を追いかけて足場を上げていく場合、その階のコンクリート齢が何日かを確認する必要があります。
改修工事の場合
ここが最大の注意点です。既存建物の実強度は、図面上の設計基準強度と一致しない可能性があります。
- 竣工図が残っていない
- 中性化が進行している
- そもそも図面と実際の施工が違う
対応としては、次の順で確度が上がります。
- 竣工図・構造図から設計基準強度を確認
- 非破壊試験(反発度法など)で概略を把握
- コア採取による圧縮強度試験
- 現場での引き抜き試験
もっとも確実なのは4です。実際に施工したアンカーを引っ張って、想定した耐力が出るかを確かめます。計算だけでは埋められない不確定要素があるため、改修では試験を計画に組み込むのが安全です。
4. 躯体に打てない場合の扱い
壁つなぎを取りたい位置に、下地が取れないことがあります。
- カーテンウォール、ALC、ECPなどの外装材
- 開口部、サッシ、ガラス面
- 打設が済んでいない範囲
- 意匠上アンカーを打てない仕上げ面
これらの面には、そのままでは壁つなぎが設置できません。単管とクランプで控えを取る、開口部から建物内部へ突っ張る、といった代替方法を採ることになりますが、専用金物より許容耐力は落ちます。
計算書では、こうした箇所を専用金物と同じ扱いにしないことが重要です。代替方法ごとに耐力を設定し、その範囲だけ間隔を詰める、という整理が必要になります。
外装材への固定については、原則としてその外装材が水平力を負担できるかを、建物側の設計者に確認する必要があります。仮設側だけで判断してよい話ではありません。
5. まとめ
- 壁つなぎの耐力は金物ではなくアンカーで決まることが多い
- 破壊モードは3つあり、最小値を採用する
- へりあき・アンカー間隔の不足はコーン状破壊耐力を大きく下げる
- 接着系は孔内清掃の品質が耐力に直結する
- 改修では実強度が不明なため、引き抜き試験を計画に含める
- 下地が取れない面は、代替方法ごとに耐力を設定する
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