壁つなぎの計算方法|必要間隔の求め方を計算例つきで解説
外部足場の計画で「壁つなぎは何メートルごとに入れればいいのか」と聞かれたとき、労働安全衛生規則の数値をそのまま答えてしまうと危険側になることがあります。風荷重から必要間隔を求める手順を計算例つきで解説します。
壁つなぎの計算方法|必要間隔の求め方を計算例つきで解説
外部足場の計画で「壁つなぎは何メートルごとに入れればいいのか」と聞かれたとき、労働安全衛生規則の数値をそのまま答えてしまうと、現場によっては危険側になります。法令が定めているのは上限値であり、風が強い地域や高い足場、メッシュシートを全面に張った足場では、計算で求まる必要間隔のほうが狭くなるからです。
この記事では、壁つなぎの必要間隔を風荷重から求める手順を、計算例を通しで追いながら整理します。
1. 壁つなぎは何のための部材か
壁つなぎは、足場を建物に固定して、水平方向の力に抵抗させるための部材です。役割は大きく二つあります。
- 風圧力による倒壊の防止:外部足場に作用する荷重のうち、支配的なのは風です。特にメッシュシートや養生シートを張ると受風面積が一気に増えます
- 足場自体の揺れ・座屈の防止:支柱の座屈長さを短くし、作業時の揺れを抑えます
このうち計算で問題になるのは、ほぼ前者です。屋内足場など風の影響がない場合は後者だけを確認しますが、外部足場では風荷重による検討が支配的になります。
2. 法令で定められている間隔
労働安全衛生規則では、足場の種類ごとに壁つなぎ等の間隔の上限が定められています。
| 足場の種類 | 垂直方向 | 水平方向 |
|---|---|---|
| 単管足場 | 5m 以下 | 5.5m 以下 |
| 枠組足場(高さ5m未満のものを除く) | 9m 以下 | 8m 以下 |
くさび緊結式足場(次世代足場を含む)については、使用する部材の認定条件やメーカーの施工基準に従います。〔要確認:自社の標準的な取り扱いに合わせて記述〕
重要なのは、この表を満たしていても安全とは限らないということです。ここに書かれているのは「これ以上広げてはいけない」という上限であって、必要間隔ではありません。
3. なぜ計算が必要なのか
たとえば高さ25mの建物に、メッシュシートを全面に張った足場を組むとします。このとき足場に作用する風圧力は、シートのない足場に比べて数倍になります。
法令上限の「垂直9m・水平8m」で壁つなぎを配置すると、壁つなぎ1箇所が負担する面積は 72m² です。ここに風圧力が作用した場合の力は、壁つなぎ専用金物の許容耐力を大きく超えます。つまり、法令を満たした配置でも計算上は成立しません。
だからこそ、風荷重から逆算して必要間隔を決めるという順序になります。
4. 計算の流れ
外部足場に作用する風荷重の計算は、一般に仮設工業会『改訂 風荷重に対する足場の安全技術指針』に基づいて行います。流れは次の5ステップです。
<!--FIG:fig-1-1:図1 壁つなぎ計算の流れ。NGなら間隔を詰めて繰り返す-->
図1 壁つなぎ計算の流れ。NGなら間隔を詰めて繰り返す
ステップ1:設計用速度圧を求める
風の強さを圧力に換算します。
q = 0.625 × (V₀ × 台風時割増係数 × 瞬間風速分布係数 × 近接高層建築物による影響係数)²
〔要確認:係数の定義と適用範囲を指針の版に合わせて確認〕
基準風速 V₀ は地域ごとに定められた値を使います。工事用足場は建物と違って設置期間が短いため、再現期間1年に相当する風速を用いるのが一般的です。ただし台風の直撃が想定される場合は、この前提が成立しない点に注意が必要です(後述)。
ステップ2:風力係数を求める
足場のどれだけが風を受けるかを表す係数です。ここで効いてくるのが充実率で、メッシュシートの目の詰まり具合を示します。
- シートなしの足場:部材だけが風を受けるため小さい
- メッシュシート(充実率0.5〜0.8程度):大幅に増加
- 防音シート・養生シート(ほぼ密閉):さらに増加
同じ足場でも、シートの仕様が変わるだけで必要間隔が変わります。計画時にシート種別が未定のまま計算を始めると、後で全部やり直しになります。
ステップ3:壁つなぎ1箇所あたりの負担面積を決める
配置の候補を仮定します。「2層2スパン」なら、
負担面積 = (層高 × 2) × (スパン × 2)
ステップ4:作用する力を求める
P = q × C × A
q:設計用速度圧、C:風力係数、A:負担面積
ステップ5:許容耐力と比較する
求めた P を、使用する壁つなぎ部材の許容耐力と比較します。超えていれば間隔を詰め、ステップ3に戻ります。
5. 計算例
条件を設定して、実際に通してみます。
設定条件
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 足場種別 | くさび緊結式足場 |
| 足場高さ | 26.0m |
| 足場長さ | 30.0m |
| 層高 | 1.8m |
| スパン | 1.8m |
| 養生 | メッシュシート全面(充実率 0.7) |
| 地域 | 一般市街地 |
| 基準風速 V₀ | 17 m/s〔要確認:地域区分による〕 |
ステップ1:設計用速度圧
q = 0.625 × (17 × 1.0 × 1.36)²
= 0.625 × 534.5
≒ 334 N/m²
ステップ2:風力係数
充実率0.7のメッシュシートを張った一般部として、
C ≒ 1.25
〔要確認:指針の算定式による。上層2層部分は別途割増〕
ステップ3:負担面積(2層2スパンを仮定)
A = (1.8 × 2) × (1.8 × 2) = 3.6 × 3.6 = 12.96 m²
<!--FIG:fig-1-2:図2 壁つなぎ1箇所が負担する面積の取り方-->
図2 壁つなぎ1箇所が負担する面積の取り方
ステップ4:作用する力
P = 334 × 1.25 × 12.96
= 5,411 N
≒ 5.41 kN
ステップ5:判定
使用する壁つなぎ専用金物の許容耐力を 6.0 kN とすると〔要確認:認定品のメーカー公表値〕、
5.41 kN < 6.0 kN → OK
参考:2層3スパンにした場合
A = 3.6 × 5.4 = 19.44 m²
P = 334 × 1.25 × 19.44 ≒ 8.12 kN > 6.0 kN → NG
間隔を1スパン広げただけで成立しなくなります。
法令上限との照合
採用した2層2スパンは、垂直3.6m・水平3.6m。単管足場の上限(垂直5m・水平5.5m)以内であり、法令上も問題ありません。
6. 実務で間違えやすい点
計算書と実際の部材が違う
もっとも多い食い違いがこれです。計算書は壁つなぎ専用金物の許容耐力で作成したのに、現場では下地が取れず、単管パイプとクランプで控えを取っている。クランプによる固定は専用金物より許容耐力が落ちます。計画段階で建物側の下地条件を確認し、専用金物が使えない範囲がどこかを押さえておく必要があります。
上層部の割増を忘れる
足場の最上部は風が回り込むため、一般部より大きな力が作用します。上層2層程度は間隔を詰めるのが通常で、計算書でも一般部と分けて記載します。
台風時の対応が計算の前提外になっている
再現期間1年で計算している以上、台風直撃はその前提を超えています。垂直養生材の一部撤去や壁つなぎの増し締め・補強といった対応を、計算書とは別に施工計画へ落とし込んでおく必要があります。
建物の形状による割増
建物の隅角部、独立足場、近接する高層建築物がある場合などは、条件が変わります。単純な直方体の建物として計算していないか、確認してください。
7. まとめ
- 法令の間隔は上限値であり、必要間隔ではない
- 外部足場では風荷重による検討が支配的
- メッシュシートの有無・種別で必要間隔は大きく変わる
- 計算書の前提部材と、現場の実際の固定方法を一致させる
壁つなぎの計算自体は、手順さえ押さえれば難しいものではありません。ただし物件ごとに条件が変わるため、Excelシートを使い回していると、地域区分やシート仕様の変更漏れが起こりがちです。
ブラウザ上で同じ計算を行う
タスクふぉでは、この記事で説明した手順をそのままブラウザ上で実行し、提出可能な形式の計算書として出力できます。
〔要確認:実際のツールURLと、無料/会員の範囲を記載〕
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