壁つなぎが取れない場所がある|構造的な代替案と配置の考え方
開口部がなくて壁つなぎが取れない、躯体側の仕上げが弱くてアンカーが効かない。こうした現場では、1本抜くだけで隣の負担が倍になることを踏まえて配置を考える必要があります。
壁つなぎが取れない場所がある|構造的な代替案と配置の考え方
計画通りの位置に壁つなぎが取れない、という状況は珍しくありません。ガラス面が続く、カーテンウォールで下地がない、意匠上アンカーを打てない、そもそもその面には建物がない。
このとき現場でよく起きるのが、「取れないので飛ばしました」という処理です。しかしこれは、計算書の前提を壊しています。飛ばした分の力は消えるのではなく、隣の壁つなぎに回ります。
この記事では、取れない場合の代替方法と、配置計画としてどう成立させるかを整理します。
1. まず、飛ばした分の力はどこへ行くか
壁つなぎ1箇所が負担する面積は、その前後左右の間隔で決まります。1箇所を撤去すると、隣接する壁つなぎの負担面積が単純に増えます。
たとえば水平2スパンで配置していた列を1本抜けば、隣は4スパン分を負担することになります。作用する力は2倍です。前回の計算例で言えば、5.41kNだったものが10.8kNとなり、許容耐力6.0kNを大きく超えます。
<!--FIG:fig-5-1:図1 1本飛ばすと隣の負担面積は倍になる-->
図1 1本飛ばすと隣の負担面積は倍になる
つまり、1本抜くという判断は、その周囲の再計算を伴います。ここを飛ばして進めるのが、もっとも危険なパターンです。
2. 代替方法の選択肢
取れない面の条件によって、採れる手が変わります。
<!--FIG:fig-5-2:図2 壁つなぎが取れない場合の代替方法-->
図2 壁つなぎが取れない場合の代替方法
開口部を利用した突っ張り
窓やサッシの開口部から足場の内側へ材を通し、躯体の内側で反力を取る方法です。
- 開口部の四周(まぐさ・方立)が反力を取れるか、建物側の確認が必要
- サッシ枠そのものに力をかけない。サッシは水平力を負担する部材ではありません
- 開口部が使える範囲は工事の進捗で変わります。内装が入れば使えなくなります
単管・クランプによる控え
躯体の鉄骨や既存の突起物に、単管とクランプで固定する方法です。
もっとも多く使われますが、注意点があります。クランプによる固定は、壁つなぎ専用金物より許容耐力が落ちます。専用金物と同じ間隔で配置すると成立しません。計算書では別部材として扱い、耐力を落とした上で必要間隔を求め直してください。
〔要確認:クランプの許容耐力(滑り耐力)と、専用金物との比を、認定値に基づいて記載〕
控え(アウトリガー・ジャッキベース)
建物側に取れない場合、地上側に控えを出して自立させる考え方です。
この場合、検討する内容が変わります。壁つなぎの引張・圧縮ではなく、転倒モーメントの照査になります。足場に作用する風圧力による転倒モーメントと、足場自重+控えによる抵抗モーメントを比較します。
地上に控えを出せるスペースがあるかどうかが前提条件です。狭小地では成立しません。
控え索(ワイヤー)
上部からワイヤーで引く方法です。引張のみを負担するため、風向によっては効きません。両方向に取る必要があります。
また、ワイヤーは伸びます。緊張度合いによって効き方が変わるため、初期張力の管理が前提になります。
先付けアンカーの計画
新築で、あらかじめ壁つなぎ位置が読める場合、型枠段階でインサートを仕込んでおく方法です。
あと施工アンカーより確実で、躯体を傷めません。ただし足場計画が躯体施工より先に確定している必要があります。仮設計画を早い段階で回すことの、直接的なメリットがここにあります。
3. 配置計画としてどう成立させるか
取れない範囲を先に確定する
計画の順序を逆にします。「等間隔で配置してから、取れない箇所を潰す」のではなく、取れない範囲を先に図面上で塗り潰し、残った範囲で成立する配置を組む。
こうすると、局所的に間隔を詰める必要がある箇所が最初から見えます。
面ごと・部位ごとに条件を分ける
一つの建物でも、面によって条件が違います。
- 北面:RC躯体、専用金物で標準配置
- 東面:カーテンウォール、開口部突っ張りのみ
- 南面:道路側、メッシュシート、控え不可
これを一律配置で処理すると、どこかが不足します。計算書も面ごとに整理してください。
図面で部材種別を描き分ける
同じ「壁つなぎ」の記号で描いてしまうと、現場では区別がつきません。専用金物、クランプ控え、開口部突っ張りを凡例で分け、それぞれの本数を拾えるようにします。
これは施工品質だけでなく、監督署の確認や元請けへの説明でも効きます。計算書と図面が対応していることが、一目で分かる状態になります。
現場での変更を計画に戻す
「打ってみたら鉄筋に当たったのでずらした」「開口が塞がったので別の場所にした」。こうした変更は必ず起きます。
問題は、それが計画側に戻ってこないことです。変更が起きたら再検討が必要な範囲を、あらかじめ現場と共有しておいてください。「1本ずらす程度なら影響ない」のか「間隔が広がるなら連絡が要る」のか、その線引きを渡しておくと、報告が上がるようになります。
4. まとめ
- 壁つなぎを1本飛ばすと、隣の負担が倍になる
- 代替方法はあるが、いずれも専用金物より条件が厳しい
- クランプ控えは耐力が落ちるため、別部材として計算する
- 地上控えは、引張・圧縮ではなく転倒モーメントの検討になる
- 取れない範囲を先に確定してから配置を組む
- 面ごとに条件を分け、図面で部材種別を描き分ける
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壁つなぎの風荷重照査は、ブラウザで入力するだけで自動判定できます。計算根拠付きの計算書をその場で出力可能です。
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