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改修工事の壁つなぎ|既存躯体の事前調査と耐力不足への対処

タスクふぉ編集部 2026/8/31

改修工事では既存躯体の構造図がないことが多く、壁つなぎの設計は難航します。外装仕上げの種類ごとの可否、タイル張り時の有効埋め込み深さ、中性化やひび割れの確認ポイントを整理します。

改修工事の壁つなぎ|既存躯体の事前調査と耐力不足への対処

新築であれば、躯体の強度も配筋も図面で分かります。改修工事にはそれがありません。

「図面がない」「あっても実際と違う」「打ってみたら中身が想定と違った」。改修の仮設計画がやりにくいのは、計算の難しさではなく、入力すべき条件が分からないことに原因があります。

この記事では、着工前に何を調べておくか、そして想定より耐力が出なかったときにどう処理するかを整理します。アンカーそのものの耐力計算については、別記事で扱っています。


1. 着工前に確認すべきこと

竣工図・構造図の有無

まず建物所有者・管理者に確認します。あれば、設計基準強度、躯体厚、配筋、外装の納まりが分かります。

ただし、あっても鵜呑みにはできません。改修が繰り返されている建物では、図面が最新の状態を反映していないことがあります。増築部と既存部で仕様が違うケースもあります。

外装の仕上げ種別

壁つなぎが打てるかどうかは、まずここで決まります。

外装の種別壁つなぎの可否
RC打ち放し・塗装打てる
モルタル+タイル張り打てるが、仕上げ厚を見込む必要あり
ALCパネル原則、水平力を負担させない
ECP(押出成形セメント板)同上
金属サイディング不可。下地の胴縁・鉄骨を狙う
カーテンウォール不可。方立・ファスナーは建物側設計者に確認

〔要確認:各仕上げの扱いを、自社の標準判断に合わせて記述〕

<!--FIG:fig-6-1:図1 仕上げ厚と有効埋込み深さの関係-->

図1 仕上げ厚と有効埋込み深さの関係 図1 仕上げ厚と有効埋込み深さの関係

タイル張りの場合、仕上げ厚の分だけアンカーの有効埋込み深さが浅くなります。仕上げ厚を無視して埋込み深さを設定すると、実際には計算通りの耐力が出ません。

躯体の状態

  • 中性化:進行していると、鉄筋腐食や表層の脆弱化が起きています。表層で耐力を取ることになるコーン状破壊に直接影響します
  • ひび割れ:ひび割れ内にアンカーを打つと耐力が落ちます
  • 既存アンカー・過去の孔:前回の改修で打った跡が残っていることがあります。近接位置に新規に打つと、耐力が確保できません

鉄筋位置

穿孔で鉄筋を切ると、建物の耐力に影響します。特に主筋を切るのは避けなければなりません。

鉄筋探査(電磁波レーダー・電磁誘導)で位置を把握してから穿孔位置を決めるのが基本です。かぶり厚も同時に分かるため、有効埋込み深さの検討にも使えます。

建物が使用中かどうか

居ながら改修では、制約が増えます。

  • 穿孔時の振動・騒音に時間制限がかかる
  • 開口部からの突っ張りが使えない(居室内に入れない)
  • 内部からの反力が取れない

条件によっては、地上控えによる自立方式を前提に組み直すことになります。計画の骨格に関わるため、早い段階で確認してください。

2. 強度が分からない場合の進め方

段階的に確度を上げます。

<!--FIG:fig-6-2:図2 既存躯体の強度確認は4段階で確度を上げる-->

図2 既存躯体の強度確認は4段階で確度を上げる 図2 既存躯体の強度確認は4段階で確度を上げる

第1段階:図面から想定 設計基準強度を仮定して計画を組みます。この時点では暫定です。

第2段階:非破壊試験 反発度法(シュミットハンマー)などで概略を把握します。簡便ですが、表層の状態に左右されるため、あくまで参考値です。

第3段階:コア採取 実際に抜いて圧縮試験にかけます。確度は上がりますが、躯体を傷めるため本数は限られます。

第4段階:現場引き抜き試験 実際に施工したアンカーを引っ張ります。もっとも確実です。コンクリート強度、施工品質、穿孔精度をすべて含んだ結果が出るためです。

改修では、第4段階を計画に組み込んでおくことを勧めます。試験本数と判定値をあらかじめ決めておき、施工計画書に記載します。

〔要確認:試験本数の考え方(総本数に対する割合など)と判定基準を、社内基準・指針に基づいて記載〕

3. 想定より耐力が出なかったときの対処

試験の結果、計算で見込んだ耐力に届かないことがあります。この場合の選択肢は次の通りです。

間隔を詰める

もっとも素直な対応です。1本あたりの負担面積を減らします。ただし、打てる位置が限られている建物では、そもそも詰められないことがあります。

埋込み深さを深くする

コーン状破壊で決まっている場合、有効です。ただし躯体厚に対して深くしすぎると、裏面まで貫通するおそれがあります。躯体厚の確認が前提になります。

アンカー種別を変える

金属系から接着系へ変更する、径を上げる、といった対応です。接着系は孔内清掃の品質が耐力に直結するため、施工管理をセットで強化してください。

養生を軽くする

見落とされがちですが、有効な手です。防音シートをメッシュシートに変える、養生範囲を必要最小限にする。作用する力そのものを減らすアプローチです。

近隣条件との調整が必要になりますが、躯体側に手を入れられない建物では、これが現実解になることがあります。

自立方式へ変更する

躯体に頼るのをやめ、地上控えによる自立足場として組み直します。スペースが必要ですが、躯体の不確実性から切り離せます。

4. まとめ

  • 改修は「計算が難しい」のではなく「条件が分からない」ことが問題
  • 外装の仕上げ種別で、打てるかどうかがまず決まる
  • タイル・モルタルの仕上げ厚は有効埋込み深さから差し引く
  • 鉄筋探査で位置とかぶりを確認してから穿孔位置を決める
  • 引き抜き試験を計画に組み込み、本数と判定値を事前に決めておく
  • 耐力不足時は、躯体側だけでなく養生を軽くする選択肢もある


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